破壊こわ)” の例文
旧字:破壞
「つまり何んだ、こう云った方がいい、今の浮世の連中は、コナコナになって破壊こわれるために、むやみに進んで行くのだとな」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何ほど風の強ければとて頼みきったる上人様までが、この十兵衛の一心かけて建てたものをもろくも破壊こわるるかのように思し召されたか口惜しい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
牛は角がかゆい、それでこすりつけるようにして、物を破壊こわして困るとか言った。今は草も短く、少いから、草を食い食い進むという話もあった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は目がくらむほど吃驚びっくりして、指定された柱のところへ行って棒立ちになった。私の空想していた花のような天国的な空想が、まるで形もないほど破壊こわされたのであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
二日って竹の木戸が破壊こわされた。そして生垣いけがき以前もとさま復帰かえった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と、不意に裏門の方から、ドッとばかりに鬨の声が起こり、鉄砲の音がつづけざまに起こり、丸太や石で門を破壊こわそうと、乱打する音が聞こえて来た。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
空吹く風もつち打つ雨も人間ひとほど我にはつれなからねば、塔破壊こわされても倒されても悦びこそせめ恨みはせじ、板一枚の吹きめくられくぎ一本の抜かるるとも
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
未だお房は、子供ながらに出せるだけの精力を出して、小さな頭脳あたま内部なか破壊こわれ尽すまではめないかのように叫んでいる——思い疲れているうちに、三吉は深いところへ陥入るように眠った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
窓の硝子は破壊こわされて、大きな穴が開いている。そこから暁風あさかぜが吹いて来る。夜は何時いつの間にかしらじらと明けて蒼白い光が花壇の花をぼんやり、照らして居るのでした。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風雨をにらんであれほどの大揉おおもめの中にじっと構えていたというが、その一念でも破壊こわるまい、風の神も大方血眼ちまなこで睨まれては遠慮が出たであろうか、甚五郎じんごろうこのかたの名人じゃ真の棟梁じゃ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
で、そこから聞こえてくるものは、人の喚き声と物の破壊こわれる音とで、そうしてそこから見えて来るものは、砂塵と日に光る斧や槌や、鉄の棒や、まさかりや刃物なのであった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
輿も松火も投げ捨てられて、輿は微塵に破壊こわされたらしく、松火は消えて真の闇となった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
棚が仆れ器物うつわ破壊こわれる。ともうすっかり仲よくなり、唄い出すは「ナカノリさん」だ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だがお蔭で薬箱は、綺麗きれいに形なしに破壊こわされてしまった。さて、弁償して貰うかな」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
物の破壊こわれる音がした。誰かが何かを投げたらしい。地に落ちて破壊れたらしい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お粂殿! お粂殿! お粂殿!」と、人の声、足音、物の破壊こわれる音、火事に付き物の嵐の音、声や音に一ぱいに充たされている、ここの修羅場の騒音を通して、紋也は大音に呼んでみた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……破壊こわせばいくらでも破壊される! 手間暇もいらず簡単に、しかも何らの非難も受けず——ところが俺には出来なかった。そういうことの出来ないように、いつか『慣らされ』てしまったからだ。
怪しの館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「大きな騒動が持ち上がり、コナコナに破壊こわれてしまうのよ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かけやで家でも破壊こわすのだろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
錠が破壊こわれて居りました。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)