矢頃やごろ)” の例文
矢頃やごろあまりに近かりしかば、銃をすてて熊にかかえつき雪の上をころびて、谷へ下る。つれの男これを救わんと思えども力及ばず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ともかくも運命の環は急加速度で縮まって行って、いよいよ矢頃やごろはよしという瞬間に、要太の突き出した叉手網さであみはほとんど水平にくうを切って飛んで行く。
鴫突き (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ヂュリ さア、いてもませう、かるゝものなら。とはいへ、わたしの矢頃やごろは、はゝさまのおゆるしをばかぎりにして、それよりきつうは射込いこまぬやうにいたしませう。
かくてはからず時をうつし日もくれかゝるかへりみち、やがて吾が村へ入らんとする雪の山かげおほかみ物をくらふを見つけ、矢頃やごろにねらひより火蓋ひぶたをきりしにあやまたずうちおとしぬ。
矢頃やごろを見はからって、撃った。なにしろ、三、四尺の距離しかないのですから、外れっこありません。頭の真ん中へ、弾は命中しました。四十貫の巨体は地響きたてて倒れました。
熊狩名人 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
矢頃やごろを計ってから語気をかえてずっと下手したでになって
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「甲賀坊、矢頃やごろの所へ逆茂木さかもぎは」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくてはからず時をうつし日もくれかゝるかへりみち、やがて吾が村へ入らんとする雪の山かげおほかみ物をくらふを見つけ、矢頃やごろにねらひより火蓋ひぶたをきりしにあやまたずうちおとしぬ。