“睦(むつまし)” の例文
二里あまり隔(へだて)たる村より十九歳の娵(よめ)をむかへしに、容姿(すがた)憎(にく)からず生質(うまれつき)柔従(やはらか)にて、糸織(いとはた)の伎(わざ)にも怜利(かしこ)ければ舅(しうと)姑(しうとめ)も可愛(かあい)がり、夫婦(ふうふ)の中も睦(むつまし)く家内(かない)可祝(めでたく)春をむかへ
ああして睦(むつまし)う一家族で居つて、私たちも死水を取つて貰ふ意(つもり)であつたものを、僅の行違から音信不通(いんしんふつう)の間(なか)になつて了ふと謂ふは、何ともはや浅ましい次第で、私(わし)も誠に寐覚(ねざめ)が悪からうと謂ふもの
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それは、鈴(すう)さん、言ふまでもありはしない。私もこんな目にさへ遭(あ)はなかつたら、今頃は家内三人で睦(むつまし)く、笑つて暮してゐられるものを、と思へば猶の事、私は今日の別が何とも謂(いは)れないほど情無い。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)