めじり)” の例文
……赤い日ざしが……青空が……白い雲が……煉瓦がユラユラとゆらめいて、次から次へと左右のめじりへ流れ出して行った。
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
茜さんの視線が、キャラコさんの顔のうえから動かなくなったと思うと、間もなく、大きな眼の中から押し出すように涙があふれ出て来てめじりから顳顬こめかみのほうへゆっくりと下ってゆく。
またつかんな」とおつぎはしづんだこゑでいつてくのを、あと卯平うへいめじりからはなみだすこれて、ちひさなたましばらやつれたしわ引掛ひつかゝつてさうしてほろりとまくらちるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
若い親方の顔が急に苦々しい、虫唾むしずの走りそうな恰好にゆがんだ。同時にそのめじりがスーッと切れ上って、云い知れぬ殺気を帯びた悪党づらに変った。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長い睫毛の間を左右のめじりへ……ほのかに白いコメカミへ……そうして青々とした両鬢りょうびんの、すきとおるようなぎわへ消え込んで行くのであった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
切れ上っためじりと高い鼻筋が時代めいて、どことなく苦味の利いた細長い顔が、暗い店の中からニッコリして出て来ると、男でもオヤと思う位だったので
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
髪毛かみのけも同様に、仮髪かつらかと思われるくらい豊かに青々としているのを、めじりが釣り上がるほど引き詰めて、長い襟足の附け根のところに大きく無造作に渦巻かせていた。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見ると若い親方は、眼を真白くなる程みはって、鏡の中の吾輩の顔を凝視している。ピリピリと動く細い眉。キリキリと冴え上っためじりゆが痙攣ひきつった唇。……吾輩の耳の蔭でワナワナと震える剃刀……。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)