眉毛まみえ)” の例文
中でもおんなのは変な気味合だ。轆轤首ろくろくび処女しんぞだが、畜生道は、得て眉毛まみえをおとしたのっぺりした年増だもんだな、業曬ごうさらしな。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色の浅黒い眉毛まみえの濃い大柄おおがらな女で、髪を銀杏返いちょうがえしにって、黒繻子くろじゅす半襟はんえりのかかった素袷すあわせで、立膝たてひざのまま、さつ勘定かんじょうをしている。札は十円札らしい。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尻だけ見える茶褐色の眉毛まみえの下が急に落ち込んで、思わざるあたりから丸い鼻がふくれた頬を少し乗り越して、先だけ顔の外へ出た。顔から下は一面に黄色いしまで包まれている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夫人 その女が……(やや息忙いきぜわしく)その女が、先生、宿へ着きますと、すぐ、あの、眉毛まみえを落しましたの。(顔を上げつつ、さっとはなじろむ)髪もこんなにぐるぐる巻にしたんです。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眉毛まみえと鼻の根と落ち合う所が、一段奥へ引っ込んで、始終しじゅう鼻眼鏡でしつけてるように見える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「危いわ、危いわ。おとなしい、その優しい眉毛まみえを、落したらどうしましょう。」
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うらやましい事、まあ、何て、いい眉毛まみえだろう。親御はさぞ、お可愛いだろうねえ。」
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平岡の細君は、色の白い割に髪の黒い、細面ほそおもえて眉毛まみえ判然はっきり映る女である。一寸見ると何所どことなく淋しい感じの起る所が、古版の浮世絵に似ている。帰京後は色光沢つやがことにくないようだ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私が弱いもんだから、身体からだも度胸もずばぬけて強そうな、あの人をたよりにして、こんな身裁しだらになったけれど、……そんな相談をされてからはね……その上に、この眉毛まみえを見てからは……
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こういうと未練があるようでおかしいが、顔質かおだちは悪い方じゃありませんでした。眉毛まみえの濃い、時々八の字を寄せて人に物を云う癖のある」といったような言葉をぽつぽつ頭の中でおもい起しながら
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)