つぶ)” の例文
この十蔵が事は貴嬢きみも知りたもうまじ、かれの片目はよこしまなる妻が投げ付けし火箸ひばしの傷にてつぶれ、間もなく妻は狂犬にかまれてせぬ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
老爺は六尺に近い大男で、此年齡としになつても腰も屈らず、無病息災、頭顱あたまが美事に禿げてゐて、赤銅色の顏に、左の眼がつぶれてゐた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
中年ちゅうねんから風眼ふうがんわずらッて、つぶれたんだそうだが、別に貧乏というほどでもないのに、舟をがんとめしうまくないという変物へんぶつで、疲曳よぼよぼ盲目めくらながら、つまり洒落しゃれ半分にわたしをやッていたのさ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川水牛角なきをあやしみ訳を聞いて貰い泣きしてその水からくなる、杜鵑ほととぎす来り訳を聞き悲しみの余り眼をつぶし商店に止まって哭き、店主貰い泣きして失心す、ところへ王の婢来り鬱金うこんを求めると胡椒
庄「いや眼はつぶれても宜しい、お前さんの薬はもう呑まないよ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)