盛上もりあが)” の例文
あの人が訴人するか、屯所へ引渡したのなら別だけれど、あんな臆病者に、そんなことが出来る筈も無し——盛上もりあがって来る恐怖を、無理にも押付けて、およつは乾く唇を噛みました。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
わたしはそのころ牛込うしごめ南榎町みなみえのきちやうんでたが、水道町すゐだうちやう丸屋まるやから仕立上したてあがりを持込もちこんで、あつらへの疊紙たゝうむすいたときは、四疊半よでふはんたゞ一間ひとま二階にかい半分はんぶん盛上もりあがつて、女中ぢよちうほそまるくした。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんもり盛上もりあがった二つの乳房——その左の乳の下のあたりへ、白い薄絹の寝巻を通して、王冠形の柄の付いたぺーパーナイフが、呪われたもののぐさで、ザブリと突っ立っているのです。
山の餌をって、山の獣達と一緒に何んの苦労もなく生い立ったのですが、髪の毛が房々ふさふさと延び、ふたつの乳房が、こんもり盛上もりあがって、四肢に美しい皮下脂肪が乗り始める頃から、身を切られるような
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)