疾病やまい)” の例文
オヽ道理もっともじゃと抱き寄すればそのまますや/\とねむるいじらしさ、アヽ死なれぬ身の疾病やまいこれほどなさけなき者あろうか。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのとき、これに打ち勝つことのできる民が、その民が永久に栄ゆるのであります。あたかも疾病やまいの襲うところとなりて人の健康がわかると同然であります。
口寡くちすくなで、深切で、さらりと物にかかわらず、それで柔和で、品が打上り、と見ると貴公子の風采あり、疾病やまいに心細い患者はそれだけでも懐しいのに、謂うがごとき人品。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その功によりて月宮殿げっきゅうでんより、霊杵れいきょ霊臼れいきゅうとを賜はり、そをもてよろずの薬をきて、今はゆたかに世を送れるが。この翁がもとにゆかば、大概おおかた獣類けもの疾病やまいは、癒えずといふことなしとかや。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
槍で囲み、旗を立て、淡く清く装った得意の人を馬に乗せていちを練って、やがて刑場に送って殺した処で、——殺されるものは平凡に疾病やまいで死するより愉快でしょう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平常ふだんのときには弱い人も強い人と違いません。疾病やまいかかって弱い人はたおれて強い人はのこるのであります。そのごとく真に強い国は国難に遭遇して亡びないのであります。
毎夜々々湯を召すさえ物憂く見えたまえば、気鬱きうつ疾病やまい引出ひきいだしたまわむ、何か心遣こころやりすべは無きかとこうべを悩ます三太夫、飛んでで、歓迎よろこびむかえ、綾子の居間に案内せり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
健全無病の壮佼わかものなり。知らず何が故に疾病やまいを装いて、貴婦人の通行を妨げしや。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)