疾呼しっこ)” の例文
数年来鬱積うっせき沈滞せる者頃日けいじつようやく出口を得たる事とて、前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
良心は疾呼しっこして渠を責めぬ。悪意は踴躍ゆうやくして渠を励ませり。渠は疾呼の譴責けんせきいては慚悔ざんかいし、また踴躍の教峻を受けては然諾せり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かわしながら、左膳がとっさに足にかけた煙草盆の灰神楽はいかぐらで、左膳自身は早くも壁を背負って立った猪突の陣、独眼火をふいて疾呼しっこした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
翌日、李陵りりょう韓延年かんえんねんすみやかにくだれと疾呼しっこしつつ、胡軍の最精鋭は、黄白のを目ざして襲いかかった。その勢いに漢軍は、しだいに平地から西方の山地へと押されて行く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かくの如くにして和す、和われにおいて栄あり、かくの如くにして戦う、戦われにおいて損なし。彼は実にかかる大権謀を以て、みずから「宝刀染め難し洋夷の血」を疾呼しっこせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それでマルクスの流れを汲んでいる者は、マルクスの主義は空想的でない科学的であると大声疾呼しっこしている。しからば科学とは何をいうのであるか、科学とはなんぞやという問がおこってくる。
「餓鬼等何を見るんでえ。」と三吉まなこきて疾呼しっこすれば、わいわいと鯨波ときを揚げて蜘蛛くもの子の散るがごとし。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
成就せしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく数年来鬱積うっせき沈滞せるもの頃日けいじつようやく出口を得たることとて前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
太い眉がひくひくとすると、忠相は低く足もとの大作を疾呼しっこした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
巡査は気を抜かれていささか手持不沙汰、今更疾呼しっこしても張合無ければ、少々声音こわねに加減をして
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)