田舎家ゐなかや)” の例文
旧字:田舍家
地面を広く取つてその中に風流な田舎家ゐなかやを造るです。食物などは東京から取寄せて、それでなくては実は保養には成らん。家が出来てから寛緩ゆつくり遊びに来るです
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分は驚いて、あわてて、寝衣ねまきの儘、前の雨戸を烈しく蹴つたが、さいはひにもしきゐみぞが浅い田舎家ゐなかやの戸は忽地たちまちはづれて、自分は一簇いちぞくの黒煙と共に戸外おもてへと押し出された。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
裏庭の雑木林が少しの黄色を残して居るのが横手の空地くうちから見えて居た。これが東洋に迄も名を知られた大詩人の寓居であらうとは思はれぬ程、粗末な田舎家ゐなかやである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
田舎家ゐなかやに中風病みのわが小父をぢが赤き花見る春の夕暮
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
其間そのあひだに褐色の屋根や白い壁をもたげて田舎家ゐなかやが散らばり、雨上りの濁つた沼のほとりには白まだら黄牛あめうしが仔牛をれて草をみ、遠方の村村むらむらの上にそびえた古い寺院の繊細きやしやな尖塔が、白楊はくやうのひよろ長い
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)