産気さんけ)” の例文
旧字:産氣
さいわいに御米の産気さんけづいたのは、宗助の外に用のない夜中だったので、傍にいて世話のできると云う点から見ればはなはだ都合が好かった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私の家まで辛々から/\避難して来て、庭の柘榴の木の下で産気さんけづいて、産後が悪いとかで、今は病院に入つてゐた。
余震の一夜 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
産気さんけづいた彼女はしきりにニヤア/\云ひながら彼の後を追つて歩くので、サイダの空き函へ古い座布団を敷いたのを押入の奥の方に据ゑて、そこへ抱いて行つてやると
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きゅうに産気さんけづいて苦しんでいる妊婦もあり、だれよだれよと半狂乱で家族の人をさがしまわっているものがあるなどその混乱といたましさとは、じっさい想像にあまるくらいでした。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
さて翌年よくねん正月元日しょうがつがんじつあさ、おきさきはいつものように御殿ごてんの中をあるきながら、おうまや戸口とぐちまでいらっしゃいますと、にわかにお産気さんけがついて、そこへ安々やすやすうつくしいおとこ御子みこをおみおとしになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
美学者の迷亭めいていがこのていを見て、産気さんけのついた男じゃあるまいしすがいいと冷かしたからこの頃はしてしまった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
産気さんけづいた彼女はしきりにニヤア/\云ひながら彼の後を追つて歩くので、サイダのばこへ古い座布団ざぶとんを敷いたのを押入の奥の方に据ゑて、そこへ抱いて行つてやると
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日取が狂って予期より早く産気さんけづいた細君は、苦しそうな声を出して、そばている夫の夢を驚ろかした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
産気さんけづいた彼女はしきりにニャアニャア云いながら彼の後を追って歩くので、サイダのばこへ古い座布団ざぶとんを敷いたのを押入の奥の方にえて、そこへ抱いて行ってやると
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)