甘煮うまに)” の例文
ひと皿に盛りつけられた鳥と野菜の甘煮うまに、焼魚と浸し物、味噌汁に白いめしというのを見て、みんなのあいだにどよめきが起こった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ぜんまいの甘煮うまにと、芝蝦しばえび南蛮煮なんばんになどはどうです。小丼こどんぶりあじ酢取すどり。若布わかめ独活うどをあしらって、こいつア胡麻酢ごますでねがいましょう」
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
晩春の頃で、独活うどと半ぺんの甘煮うまになども、新造しんぞは二人のために見つくろつて、酒を白銚はくてうから少しばかり銚子に移して、銅壺どうこでおかんをしたりした。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
名の示す如き甘煮うまにが、京都名産と銘打って、百貨店デパートの食料品部の一役を勤める頃となれば、僕はその辺に行ったついでの、出たとこ勝負で、最寄りの百貨店デパートで求めることにしている。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
「……ここに八頭やつがしら甘煮うまにと云うのが有ります。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さかな鶉椀うずらわんに鴨が主で、甘煮うまににはきのこが三種はいっていた。初めに案内したおわかという女中が、二本めまで給仕に坐った。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
佃煮つくだにと目刺の焼いたのと、甘煮うまになどが並び、繁次は二杯まで眼をつむって飲んだ。これまでとは違って、苦くもなく、匂いも鼻につかなかった。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
刺身があり汁椀があり、塩焼、甘煮うまに、香の物まであった。長火鉢の火をかきおこして、酒の燗をつけながら
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
焼いた干物になます、菜の浸し物に野菜の甘煮うまに、椀は落し卵の吸物に、凍豆腐の味噌汁というつつましいものであったが、給仕に坐ったきいは薄化粧をしていた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
喜助はすばやく二杯、手酌であおり、膳の上にある鉢の中から慈姑くわい甘煮うまにをつまんで口へほうりこんだ。
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まもなく、三十四五になるぶあいそな女中が、甘煮うまにと酒を持ってあらわれた。箱根と違って、この大磯の宿しゅくは気温も高く、湯あがりの肌には浴衣ゆかた一枚で充分だった。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
前には焼いた干物と甘煮うまにが置いてあり、差向いにおのぶが腰を掛け、酌をしてやっていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
万三郎も暢気のんきだが、兵馬も暢びりした性分で、こんな話になると二人とも飽きないのである。——川魚の塩焼に芋の甘煮うまにで、万三郎はあまり強くないが、二人はいい心持そうに盃を重ねた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
骨になった魚の皿、甘煮うまにの鉢、空になった汁椀や八寸など、飲みちらし、喰べちらしたあとが、いかにもさむざむとした感じにみえる。半三郎は手酌で飲み、十兵衛はそれを睨みつけていた。
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)