理髪師とこや)” の例文
旧字:理髮師
かく患者等かんじゃら理髪師とこやほかには、ただニキタ一人ひとり、それよりほかにはたれうことも、たれることもかなわぬ運命うんめいさだめられていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
吉さんというのは地方町じかたまちの小学校時代の友達で、理髪師とこやをしている山谷通さんやどおりの親爺おやじの店で、これまで長吉の髪をかってくれた若衆わかいしゅである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
理髪師とこやの源助さんが四年振で来たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた様に、口から口に伝へられて、其午後ひるすぎのうちに村中に響き渡つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その理髪師とこやのイワン・ヤーコウレヴィッチがかなり早く眼をさますと、焼きたてのパンの匂いがプーンと鼻に来た。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「……今朝から理髪師とこやが一ペン……と、看護婦が一度と……その前に自分で何遍も何遍も……すくなくとも十遍以上ここんとこを掻きまわしているんですけど……ちっとも痛くはなかったんですが……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
きちさんとふのは地方町ぢかたまちの小学校時代の友達で、理髪師とこやをしてゐる山谷通さんやどほりの親爺おやぢの店で、れまで長吉ちやうきちの髪をかつてくれた若衆わかいしゆである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
理髪師とこやのイワン・ヤーコウレヴィッチが顔をあたってくれたのはまだ水曜日のことで、その水曜日いっぱいはもちろん、つぎの木曜日もずっと一日じゅう
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
ただ二ヶげつに一だけ、理髪師とこやのセミョン、ラザリチばかりここへる、そのおとこはいつもってニコニコしながらってて、ニキタに手伝てつだわせてかみ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それが、九歳ここのつ十歳とうの時、大地主の白井様が盛岡から理髪師とこやを一人お呼びなさるといふ噂が、恰も今度源助さんが四年振で来たといふ噂の如く、異様な驚愕おどろきを以て村中に伝つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その時、入口からひょっこり姿を現わしたのは理髪師とこやのイワン・ヤーコウレヴィッチであったが、その動作ものごしはたった今、脂肉を盗んでちのめされた猫みたいに、おどおどしていた。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
理髪師とこやの源助さんは、四年振で突然村に来て、七日の間到る所に驩待くわんたいされた。そして七日の間東京の繁華な話を繰返した。村の人達は異様な印象を享けて一同多少づゝ羨望の情を起した。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)