王昭君おうしょうくん)” の例文
源氏は「胡角一声霜後夢こかくいっせいそうごのゆめ」と王昭君おうしょうくんを歌った詩の句が口に上った。月光が明るくて、狭い家は奥の隅々すみずみまであらわに見えた。深夜の空が縁側の上にあった。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
伊藤は牙籌がちゅう一方の人物で、眼に一丁字なく、かつて応挙おうきょ王昭君おうしょうくんの幅を見て、「椿岳、これは八百屋やおやお七か」といたという奇抜な逸事を残したほどの無風流漢であった。
無学な鉱夫あがりの成金なりきんだなぞということから、胡砂こさふく異境にとついだ「王昭君おうしょうくん」のそれのように伝えられ、この結婚には、拾万円の仕度金が出たと、物質問題までがからんで
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
十六になる長女の茶々ちゃちゃをかしらに女の子のみ三人を連れたお市御料人は、それこそ、王昭君おうしょうくんの遠きへ行く日にも似るかなしき綾羅錦繍りょうらきんしゅうにつつまれて、五彩の傘輿さんよは列をなして北越の山をこえ
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小翠は戸を閉めて、また元豊を扮装ふんそうさして項羽こううにしたて、呼韓耶単于こかんやぜんうをこしらえ、自分はきれいな着物を着て美人に扮装して帳下の舞を舞った。またある時は王昭君おうしょうくんに扮装して琵琶をいた。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「君は王昭君おうしょうくんをどう思うね?」
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
始終俯向うつむきがちなので婿どのがしきりに気をんでいたが、帝国ホテルから迎いの馬車がくると新夫婦は同乗して去ったと、胡北こほくへ送らるる王昭君おうしょうくんのようだとまで形容してあるが
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また元帝が王昭君おうしょうくん胡地こちへ送ったはなしも有名なものではありませんか。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小さくて、お可愛らしい花嫁すがたは、王昭君おうしょうくんのようでした」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)