もう)” の例文
似而非えせ賢者何程なにほどのことやあらんと、蓬頭突鬢ほうとうとつびん垂冠すいかん短後たんこうの衣という服装いでたちで、左手に雄雞おんどり、右手に牡豚おすぶたを引提げ、いきおいもうに、孔丘が家を指して出掛でかける。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
憲政擁護けんせいようごと政治浄化じょうかもう運動を展開している最中なので、それから手をひくわけには絶対に行かない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
勝平の眼が、段々狂暴な色を帯びると共に、彼はいきおいもうに瑠璃子に迫って来た。彼女は、相手の激しい勢にされるようにジリ/\と後退あとずさりをせずにはいられなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
つい今しがた母胎を出たばかりなのに、小猫こねこの様な啼声なきごえを出して、いきおいもうに母の乳にむしゃぶりつく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なんじ、いかにもうなりとも、ふくろのなかのねずみどうようだ、時うつればうつるほど、ここは鉄刀てっとう鉄壁てっぺきにかこまれ、そとは八門暗剣の伏兵ふくへいにみちて、のがれる道はなくなるのじゃ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに、戦争の始まる前頃になると、五日七日と餌を喰わさずにおいて放すのだから、敵勢の兜や鎧を見ると、勢いもうに襲いかかって行く。つまり、それと同じ方法で馴らしたものに相違ない
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
其敵ひとしくもうなりき、敵は山地の*フエールシン
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
なお、奉行の陳文昭ちんぶんしょうは、そうした公的な半面、ひそかに人をやって、獄中の武松をいたわった。武松は義人である、その行為は、もうに過ぎて惨酷な犯行を敢てしたが、心情愛すべきところもある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)