片身かたみ)” の例文
しかも呼込まれる先々が大抵レコが留守だすケニ間違いの起り放題で、又、間違うてやりますと片身かたみの約束のさばが一本で売れたりします。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
片身かたみちがいに足を動かしているうちに、いつのまにか平七はふらふらと、ゆうべのあの石原町の小料理屋の方へ歩いていった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
片身かたみの子供もすでに大きくなっていた。彼女は加世子の生きていたころも今も、同じ距離を庸三との間に置いていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
でも世間には、自分の可愛ゆい片身かたみを、罪の塊りだなんて闇から闇に送る親もないではありませんが……
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一人はかならず手傳てつだはするとふてくだされ、さてさて御苦勞ごくらう蝋燭代ろうそくだいなどをりて、やれいそがしやれぞひま身躰からだ片身かたみかりたきもの、おみね小松菜こまつなはゆでゝいたか、かずあらつたか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一刀いっとうをピタリと片身かたみ青眼せいがんけたという工合に手丈夫てじょうぶな視線を投げかけた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
思出おもいでの種に、き人を忍ぶ片身かたみとは、思い出す便たよりを与えながら、亡き人をもとに返さぬ無惨むざんなものである。肌に離さぬ数糸の髪を、いだいては、泣いては、月日はただ先へとめぐるのみの浮世である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あれを御叔父さんの片身かたみに僕にくれ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)