さや)” の例文
さうして御米およね顏色かほいろは、宗助そうすけかゞみなかみとめたときよりも、さやかにはならなかつた。をつと役所やくしよからかへつてると、六でふてゐることが一二あつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だが、そのとき、殺気をなごめるようにぽっかりと光芒こうぼうさやけく昇天したものは、このわたりの水の深川本所屋敷町には情景ふさわしい、十六夜いざよいの春月でした。
私はさんざんに翻弄され、それでも、若葉を嗅ぐような、さやけい匂いをつけて戻ってきました。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
古来青空の美しさは多くの詩歌にも歌われ、人々の心持をさやけく、晴々と豊かにするものであるが、その青空が空気中の塵のために出来るということは、面白いことであろう。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
今朝は、陽の色までが、何となくさやけく違って来たように仰がれた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音もさやかにかがやかに捧げまつりね。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
日はますます短かくなった。そうして御米の顔色は、宗助が鏡の中に認めた時よりも、さやかにはならなかった。おっとが役所から帰って来て見ると、六畳で寝ている事が一二度あった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)