煉瓦造れんがづく)” の例文
そこへあなた、ニョキニョキと、まあ飛んでもない高い煉瓦造れんがづくりの塔が出来ちまったんですから、驚くじゃござんせんか。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのほか南滿洲みなみまんしゆう各地かくちには、ちひさな煉瓦造れんがづくりのはか石棺せきかんがありますが、ことにめづらしいのは、貝殼かひがらでもつて四角しかくかこみ、そのなか死體したいをさめたはかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いよいよ彼女が煉瓦造れんがづくりの狭い一室に入れられて焼かれはじめたとき、わたしは恐ろしくはありましたけれど、約束通り彼女の焼ける姿を眺めることにしました。
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
煉瓦造れんがづくりなんぞ建って開けたようだけれど、大きな樹がなくなって、山がすぐ露出むきだしに見えるから、かえって田舎いなかになった気がする、富士の裾野すその煙突えんとつがあるように。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名は日本橋だけれどもその実は純然たる洋式で、しかも欧洲の中心でなければ見られそうもないほどに、にも丈夫じょうぶにもできている。三人は橋の手前にある一棟ひとむね煉瓦造れんがづくりに這入はいった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
銀座の表通りを去って、いわゆる金春こんぱる横町よこちょうを歩み、両側ともに今では古びて薄暗くなった煉瓦造れんがづくりの長屋を見ると、自分はやはり明治初年における西洋文明輸入の当時を懐しく思返すのである。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼等は、ある丘の、もと露西亜軍ロシアぐんの兵営だった、煉瓦造れんがづくりを占領して、掃除をし、板仕切で部屋を細かく分って手術台を据えつけたり、薬品を運びこんだりして、表へは、陸軍病院の板札をかけた。
雪のシベリア (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
柳の木のうしろにある赤い煉瓦造れんがづくりの倉に、山形やまがたの下に一を引いた屋号のような紋が付いていて、その左右に何のためともわからない、大きな折釘おれくぎに似たものが壁の中から突き出している所を
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ようやく「ツーチング」という処へつく。今度は円太郎馬車で新宅の横町の前まで来た。「どれが内ですか」と聞いた。向うに雑な煉瓦造れんがづくりの長屋が四五軒並んでいる。前には何にもない。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)