焼米やきごめ)” の例文
旧字:燒米
むこうで人足にんそくたちが、やきするめと焼米やきごめほおばっているのを見て伊部熊蔵いのべくまぞう、それがしいなぞだろうとさっして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから苗代なわしろのこしらえがすぐにつづき、籾種もみだねをまいてしまった日にも小さい祭りがあり、種籾たねもみのあまりを焼米やきごめにして、袋に入れてもらって子どもらはよろこんでんでいる。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
焼米やきごめや鹿聞菓子に夜もすがら 半残
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
この山にえている、葡萄ぶどう苔桃こけもも若老わかおい、しゃくなげの、それにくりだのかきだの、仙人草せんにんそうだの、いろんなものをすこしの焼米やきごめぜたのでございます。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滋賀県北部などで麦の炒粉いりこをカミコと謂うのと、飛騨ひだ焼米やきごめをカミゴメというのと、二つの言葉の似ているのは偶然でなく、双方ともに以前は儀式の食物であったことが推察せられる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「よし、向こうへいけば、まだ人数がいるはずだから、これだけでいいだろう。五そくずつの草鞋わらじと三日ぶん焼米やきごめこしにつけて、すぐに西門にしもんのおほりぎわへあつまりなおせ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種蒔たねまきと苅掛かりかけの日の焼米やきごめだけは、まだ型ばかりは残ってもいるが、生米なまごめをつかんで口に入れるようなことは、生米むべからずという戒めが無くとも、もう田舎いなかでも見ることが稀になった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
苗代のあぜの内側にの枝を插し、焼米やきごめ雑魚ざことを供えてサンバイを祭った例があり、伊予大三島の北端の村には、正月二日に米一升を年神としがみに供えて、これをサンバイオロシという習わしもあったが
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と辞退して、袖の中から、紙に包んだ焼米やきごめを出して
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)