焦点しょうてん)” の例文
旧字:焦點
だが、僕にはもう一つ選ばなければならない怒りの焦点しょうてんがある。それは前者ほど大きな、そして永久な敵ではないかも知れない。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なぜかといえば、その人選じんせんはとにかく、あらそうべき焦点しょうてんにはこちらになんの相談そうだんもなく、こういう無類むるい部門分ぶもんわけをして、勝手かって註文ちゅうもんをつけてきたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがこの煙突の根元へ焦点しょうてんわせてみて判ったことだが、灰色のモルタルの色で、この煙突だけは、つい最近出来たものだということが判った。これは面白いことだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もくもくの水の湧き上る渦の音を聞いて復一の孤独が一層批判の焦点しょうてんを絞り縮めて来た。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そうして私はすれちがいざま、その老人の焦点しょうてんを失ったような空虚うつろ眼差まなざしのうちに、彼の可笑おかしいほどな狼狽ろうばいと、私を気づまりにさせずにおかないような彼の不機嫌ふきげんとを見抜みぬいた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いつも半ば顔をせ、眼をつぶるようにして、ぼそぼそと、落ち葉をふむ足音のような声で話すくせだったが、何か大事だと思う話の焦点しょうてんにふれだすと、その眼は
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
で、鐘巻一火かねまきいっかたまへ、凱歌がいかそうしてひきあげてきたはいいが、それほどまで争奪そうだつ焦点しょうてんとなっていた、かんじんな咲耶子その者のすがたが、いつのまにかうしなわれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは学校で実験をしたときに、ガラス球に水をいれ、それをレンズにして、太陽の光のあたる所へ出し、その焦点しょうてんのむすんだところへ、黒い紙をもっていくと、その紙がもえだしたことがあった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うわさはどこもかしこもであるが、その焦点しょうてんの人々はあれからどこへいったろう?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人は八倍の双眼鏡を目にあてて、塔に焦点しょうてんをあわせる。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、にわかに、覇気はきを、盛りかえし、望むところの、焦点しょうてんをつかみ得たように
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合せ鏡に焦点しょうてんをとらえる角度は、たれにでも自由である。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)