火先ほさき)” の例文
けむりしづかに、ゆる火先ほさき宿やどさぬ。が、南天なんてんこぼれたやうに、ちら/\とそこうつるのは、くもあかねが、峰裏みねうら夕日ゆふひかげげたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火はほんの一刻の間にめ廻す火先ほさきと火先のつながりから、一さいに大きいひろがりから、塊に変って行った。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一つの蛾が朱筆の穂のような火先ほさきに、素早く嘗められて畳の上へ落ちた。死んだと見えて動かなかった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風に動いてゐる伊予簾いよすだれ、御浜御殿の森のからすの声、それから二人の間にある盃洗はいせんの水の冷たい光——女中の運ぶ燭台の火が、赤く火先ほさきなびかせながら、梯子段の下から現はれるのも
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
警視庁が燃えあがって、その火先ほさきが今や帝劇を襲おうとしていることも聞いた。
火に追われて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)