たん)” の例文
山は開けて上流を見るべく、一曲毎きよくごとに一らいをつくり、一瀬毎に一たんをたゝへたる面白き光景は、宛然えんぜん一幅の畫圖ぐわとひろげたるがごとし。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
川は急流でところどころに瀬を作り、またたんを作つてゐる。潭のところで若者らは童子どうじをも交へて泳ぎ、寒くなると川原の砂に焚火たきびしてあたつてゐる。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
黒谷橋から断魚渓に沿うて、蟋蟀こおろぎ橋へ上った。岩を咬む急たんが、ところどころでは、淵となって静かな渦を巻いていた。そこには背の黒い小さな川魚が、静かに遊んでいた。
仙人掌の花 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
開封府かいほうふに居らしめ、第六子てい王とし、武昌ぶしょうに居らしめ、第七子せい王とし、青州府せいしゅうふに居らしめ、第八子を封じてたん王とし、長沙ちょうさき、第九子ちょう王とせしが、は三歳にしてしょう
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
風が涼しい、たんは澄み、碧流へきりゅうは渦巻く。紫紺しこん水禽みずどりは、さかのぼる。遡る。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
金剛山こんがうざんの山水美がたんと岩とにあることは私も度々説いた。実際あゝした美しい刺繍されたやうな潭は日本にはない。
あちこちの渓谷 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
しかしてわが立てる脚下の大溪潭は、まさに是れ數十のらい、數十のたんを合せたるものと稱すべく、沈々として流れ來りたる碧き水の、忽ち河中の一大奇巖に逢ひて、鞺々だう/\澎湃はうはいの趣を盡したる
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)