ぎょ)” の例文
このときを始めとして、余と少女との交わりようやくしげくなりもて行きて、同郷人にさえ知られぬれば、彼らは速了そくりょうにも、余をもて色を舞姫まいひめの群れにぎょするものとしたり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もとより暴君汚吏おり民を悩まし人をぎょしたるものもすくなからざりしといえども、概して論ずれば徳川時代の封建政治は、我が国民に取りては、開闢かいびゃく以来無上むじょうの善政たることは、吾人ごじんが敢て断言する処。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
通人の話に、道楽の初は唯いろぎょする、膏肓こうこうると、段々贅沢になって、唯いろぎょするのでは面白くなくなる、惚れたとかれたとか、情合じょうあいで異性とからんで、唯の漁色ぎょしょくおもむきを添えたくなると云う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
世にいうぎょしょうこうぼくの四隠のうち、彼のはそのいずれでもない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)