流謫るたく)” の例文
海と島々と土人達と、島の生活と気候とが、私を本当に幸福にして呉れるだろう。私は此の流謫るたくを決して不幸とは考えない……。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
セルバンテスにしろ、これにしろ、そのことによって宝石となり得る優秀な人々にとって流謫るたくとは何たる深い意味をもっていることでしょう。
第三百十四回“佐渡へ”の中で、流謫るたくのお方を後鳥羽院ごとばいんとしたのは全く私の思いちがいで「順徳天皇」でなければならない。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流竄りゅうざん。そういう言葉が彼にはすぐ浮ぶのだ。だが、彼は身と自らを人生から流謫るたくさせたのではなかったか)
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
それらの流謫るたくの神々にいたく同情し、彼等をなつかしみながらも、新らしい信仰に目ざめてゆく若い貴族をひとり見つけてきて、それをその小説の主人公にするのだ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その寂寥はすでに人を狂死せしめる苦痛をかくしてゐたでもあらう。他巳吉の跫音が杜絶えたなら、最後の生気が杜絶えたやうなものだつた。魂の流謫るたくを受けた左門であつた。
西洋は——最も西洋的なギリシアは現在では東洋と握手してゐない。ハイネは「流謫るたくの神々」の中に十字架にはれたギリシアの神々の西洋の片田舎に住んでゐることを書いた。
国政を誤りたる専横の徒を貶黜へんちゅつすべきこととあるのと、お由羅処分のこと、それから、近藤崩れにて、流謫るたく脱奔したる者を、召還めしかえすことと、この三ヶ条は、今申したように、総て
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
紫衣褫奪しいちだつ事件に連坐して、流謫るたくの四星霜を出羽かみやまに過した沢庵は、寛永九年七月にゆるされて江戸の土を踏んだ。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ツワイクが「流謫るたくこそは創造的天才をして、己の真の事業の視界と高さとを測らしめるものだ」
一、近藤崩れ(お為派崩れ)に、流謫るたくしたる人々を、速に召喚する事
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
マターファは称号剥奪はくだつの上、遥かヤルート島へ流謫るたくされ、彼の部下の酋長しゅうちょう十三人もそれぞれ他の島々に追放された。叛乱者側の村々への科料六千六百ポンド。ムリヌウ監獄に投ぜられた大小酋長二十七人。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
流謫るたくの公文を持った小役人二人が、これから遥か孟州もうしゅうの流刑地まで、彼を護送して行くことになる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何等罪状の指摘できないマターファ(彼は、いわば喧嘩けんかを売られたに過ぎぬのだから)が千カイリ離れた孤島に流謫るたくされ、一方、島内白人の殲滅せんめつ標榜ひょうぼうして立った小タマセセは小銃五十ちょうの没収で済んだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)