洗足すすぎ)” の例文
旅人たびにんだよ、この通り、旅路だから草鞋わらじ脚絆きゃはんという足ごしらえだあな、まずゆるゆるこれを取らしておくれ——それ、お洗足すすぎの用意用意
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へいへいこれはお早いお着きで……おいおい洗足すすぎを差し上げな。……松の一番だよ。ご案内……」帳場の番頭お世辞を云う。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これでは井戸というよりも、たらいの底に、洗足すすぎの水が捨て残っているようなもので、はいっても裾をぬらすに足らぬほどだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし汀が出て来たし、鉄之助も笑いながら、いかにも仔細ありげに促すので、ともかくも洗足すすぎをし、衣類の雪を払って、座敷の下へにじり進んだ。
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「これよ、誰ぞ出てこんか、わしの親しい幼友おさなともだちが見えてござる。ここへ洗足すすぎを持ってきてくだされ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いった庄屋は、洗足すすぎの水を取らせようと、家のものを見廻したが、誰もいないので
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「イヤ。まずまずお話はあとから……こちらへ上り下されい。手前一人で御座る。遠慮は御無用。コレコレ金作金作。お洗足すすぎを上げぬか……サアサア穢苦むさくるしい処では御座るが……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「これ、お洗足すすぎを。それ御案内を。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
果ては二人のために洗足すすぎの水まで取ってそなえてくれるもてなしぶりに、弁信はともかく、米友はいたく満足の意を表しました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
洗足すすぎたらいを持って来た小女が、盥をひっくり返して逃げ、店にいた番頭ひとりを残して、他の男や女の雇人たちはみな、おそるおそる奥のほうへ姿を消した。
ひとごろし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いま洗足すすぎをとってあがって来たつづみの与吉、うす暗い一間へ通されてのっけからケチをつけてかかる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どなたか、急いで、水をくだされ、——洗足すすぎではない、生信房どのが、怪我けがをなされたので、やっと抱えて戻ってきたのじゃ。——はやく一口、水をあげて下されい」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあさあお上りなさりませ。洗足すすぎの湯も取らせましょう。猿若猿若湯を持って来いよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「連れの方が出来ましたから、お洗足すすぎを上げてください。お洗足がすんだら、わたしの部屋へ御案内をしてください」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
洗足すすぎをとった藤吉、気易に上り込んだ。宗十郎店は佐平次の住居。勘次彦兵衛はまだ来ていない。
さして古い家ともみえないが、安普請なのだろう、たてつけが悪く、戸はぎしぎしときしんだ。おみやはさきにあがって、中から勝手口をあけ、洗足すすぎの水を取ってくれた。
「おや、姫路の若殿ではないか。むすめ、むすめよ。お洗足すすぎを出しておけ」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて、足も取り、洗足すすぎも終ってみると、早速通されたところは、お角さん借切りの豪華な一室でありました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いやそれよりもまずお召替えをなさらなければいけません。ただいま洗足すすぎをお持ち申します」
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仔細しさいありげな遠国の武士——と見て、洗足すすぎの水もみずからとってやる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
見るもの、聞くものに、一通りへらず口をたたかなければ納まらぬ道庵、まだ洗足すすぎの方はお留守で、往来をながめると、急ぎ足な三人連れの侍、東へ向って通るのを見て
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「うむ、——洗足すすぎを取ってくれぬか」
松林蝙也 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
道庵は洗足すすぎたらいの中へ立ち上って驚き、驚きながら手をのばして、その提灯を拾い取って見ると、それは梅鉢の紋に、御用の二字……ははあ、加賀様御用の提灯というやつだな……
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道庵先生は玉屋の店の縁先へ腰をかけて足を取り、洗足すすぎのお湯の中へ足を浸していると、旅籠屋はたごやの軒場軒場の行燈あんどんに火が入りました。それをながめると道庵は、足を洗うことを打忘れ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時、草鞋わらじを取って洗足すすぎを終った久助が炉辺へ寄って来て
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
米友は、洗足すすぎを忘れて、あっけに取られっぱなしです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お洗足すすぎを差上げ申して、それからあの、お食事を」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「金助さん、お洗足すすぎ
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)