気永きなが)” の例文
旧字:氣永
いやただにそう言いくるめるばかりでなく、ぜひ買いたいと思わせてしまう。随分気永きながな取引である。だがそれも別に不思議はない。
将来の足掛あしがかりを、求めようとしたであろうし、えてみのりを待つほどの忍耐をもって、気永きながに風と潮行しおゆきとを観測してゆくとすれば
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「いや、気永きながに待たなくちゃだめだよ。世界中の汽船がここに集まってくるわけのものじゃあるまいし、もっとがまんすることだ」
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わしは、早速その住田すみだという医学士を訪ねて様子を聞いて見ると、別に悪い病ではないが、仲々頑強な腫物だから、気永きながに治すほかはない。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
同感或は情緒、これこそ一切の文学の核心ではないか。吾々は丹念に仕立上げる花造りの様に気永きながに待たなければならない。
第四階級の文学 (新字新仮名) / 中野秀人(著)
巴里パリイやセエヌや平原を眺めながら二十町もある例の横長い岡の上を気永きながに歩き切つて、其れから名高い森の中へはひつて行つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
三百三十年の間、太平洋に向うヨーロッパの全商業は、感心すべき気永きながさであるいは喜望峯を、あるいはケープホーンを迂回うかいして行われてきた。
味方もせい/″\しろをけんごにこしらえて気永きながにかゝるよりしかたがないと仰っしゃって、そなえをきびしくあそばされ、きゅうにはおせめなさりませなんだ。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お酒もおまつり以外には飲まず、そうして、内気でちょっとおしゃれな娘さんに気永きながれなさい。
美男子と煙草 (新字新仮名) / 太宰治(著)
気永きながに見ていてください。はらはらとお心をつかってお恨みしたりなさらないように」
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
平岡もまた、彼の才能を捨てきれずに、気永きながに見ているという態度である。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
売ってくれるものなら買いとるように気永きながにやるほかはなかった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まずこの人たちの経験を改めてゆく必要があって、それを気永きながに企てているうちに、近世史の舞台は幾度となく廻転したのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そんな気永きながを言っては困る、今、馬春堂は命旦夕たんせきに迫っておる……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少くも、気永きながに地をむさぼり食ふ植物の如き
失楽 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)