気息奄々きそくえんえん)” の例文
たしか左の部屋だったと、無造作にあけようとした瞬間、その部屋のなかから、気息奄々きそくえんえんたる女のうめきがきこえてきたから、たまげた。
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
こんな女がどうしてここにいたのか、その子細をたずねようとしても、彼女は気息奄々きそくえんえんとしてあたかも昏睡せる人の如くである。
それが先年の震災で大破損を受け、応急手当によって今日まで余命をつなぎましたが、もう気息奄々きそくえんえん、いつたおれるかも知れません
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一敗またあたわざるの神経衰弱にかかって、気息奄々きそくえんえんとして今や路傍に呻吟しんぎんしつつあるは必然の結果としてまさに起るべき現象でありましょう。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
目の下に黒いあざのごときものが現われ、一瞬間前までの闘志満々たる大統領は、たちまちにして気息奄々きそくえんえんたる瀕死の老翁ろうおうと化し去ったのである。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どこか打撲傷をうけたらしく、一見したところ気息奄々きそくえんえんとしてゐたが、房一が手拭をとり除いたときに、男はかすかに眼を開けて房一の顔を見た。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
キンチャコフの方が先に気がついたらしく、そのころ六条は、気息奄々きそくえんえんとしてゴンドラの底に横たわっていた。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その箱のそばにまた、気息奄々きそくえんえんたる原士と堀田伊太夫の死骸が仆れている。そして、その人形箱は砕けていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちま濛々もうもうたる白煙が、一切を私の目から拭き消したと見ると、すぐまた現れた地獄絵図には、一人の若ものが気息奄々きそくえんえんの姿で、地獄のそばに横たえられてある。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
ここで気息奄々きそくえんえんたる道庵は動きが取れない。石の重しをかけられて、首と両手と両足をもがくばかり。張子の虎のような、六蔵の亀のような形を、裸松はおかしがり
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
赤ん坊は女のそばにころがっており、産婦は気息奄々きそくえんえんたるありさまであった。彼女は何ひとこと物を言わなかったが、それは言いたくても、もう口がきけないからであった。
それもこの気息奄々きそくえんえんたる場面を活気づけようとして、わざわざ姿を現わしでもしたように、ござがけの荷を積んだ荷馬車で偶々たまたま一人の百姓がそこへ乗りこんで来たればこそで、いつもだったら
(訳者曰くこれ日蓮上人一代記八枚続のうち佐渡ヶ島の図の事なり。)されど以上述べたるは皆例外の逸品にして吾人の浮世絵なる美術が気息奄々きそくえんえんとしてしかもなほ容易にその死期に到達せざりしは全くこれら例外なる傑作ありしがためなるを
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鉄梯子につかまって、上を見ると、政は、気息奄々きそくえんえんたる形であるが、早くも半分ばかりの高さまで登っていた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう気息奄々きそくえんえんとしている袁術の手を肩にかけながら、甥の袁胤えんいんは炎天の下を懸命にあるいていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうなると、この際、気息奄々きそくえんえんとしている河村から聞きだすのが一番いいことだと思われたのに、彼がなおも頑固にしゃべらぬとあっては、悲観せざるを得なかった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ウーム、ウームと、外には、気息奄々きそくえんえん傷負ておいうめきが、不気味にたかくなっていた。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蛇毒にやられて、かびくさい倉庫の床に、気息奄々きそくえんえんのハルクほど、みじめな者はなかった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
気息奄々きそくえんえんたる身体をサンキス号の船上に移したその翌朝のことで、当時サンキス号はアイスランド島のオルタ港へ急航の途中にあり、突然大統領からの暗号電報に接した次第であった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)