気嵩きがさ)” の例文
だがまたそうとばかり判断も仕切れない。あの気嵩きがさな老妓がそんなしみったれた計画で、ひとに好意をするのではないことも判る。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
気嵩きがさのようでも根が正直者のお霜である。かまをかけられて恐れ入ったらしく、さっきから下げている頭を畳に摺りつけた。
萌黄もえぎの風呂敷につつんだその蒲団を脊負いださせるとき、お島は気嵩きがさな調子で、その時までついて来た順吉をはげました。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鳶肩豺目さいもく結喉けっこう露唇ろしんなんというのは、物の出来る人や気嵩きがさの人に、得てある相だが、余り人好きのする方では無い。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
且つ、同姉妹が二人共、女性としては珍らしき気嵩きがさなる性格の所有者なる事実よりこれを推せば、両人の間にかかる黙契の成立し得べき事は想像にかたからざる事。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
飽くまで侮る一言ひとことに、年齢少としわかにて気嵩きがさの照子は、手巾ハンケチ噛占かみしめて、口惜涙くやしなみだを、ついほろほろ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気嵩きがさなる彼は胸に余して、聞えよがしに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
だがまたそうとばかり判断も仕切れない。あの気嵩きがさな老妓がそんなしみったれた計画で、ひとに好意をするのでないことも判る。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
殊にこっちの伜が気嵩きがさのたくましい生まれつきならば格別、自体がおとなしい華奢きゃしゃたちであるだけに、母としての不安は又ひとしおであった。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とまで打撒ぶちまけるものは有っても、勝気気嵩きがさの左褄、投遣りの酒機嫌。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先鋒せんぽうになろうと父に請うた位に気嵩きがささかしかった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あれほど気嵩きがさで散漫だと思う自分がしっとり落付き、こまかく心が行届いて、無我と思えるほど自分には何にも無くなり、ひたすら皆三の身の囲りの面倒を見てやり度くなるのであった。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あれほど気嵩きがさで散漫だと思ふ自分がしつとり落付き、こまかく心が行届いて、無我と思へるほど自分には何にも無くなり、ひたすら皆三の身の囲りの面倒を見てやりくなるのであつた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)