毎時いつも)” の例文
神秘に近いものが毎時いつもおくじに現われているようにさえ思うのであった。米の相場師などがよく朝早くやって来た。「吉」が出ると
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それにお島は今月へ入ってからも、毎時いつものその時分になっても、まだ先月から自分一人の胸に疑問になっている月のものを見なかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
丁度そこで与良町よらまちの方からやって来る子安に逢った。毎時いつも言い合せたように皆なの落合うところだ。高瀬は子安を待合せて、一諸に塾の方へ歩いた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
云ひければをりふれては無理なる難題なんだいをも云掛いひかけなどしてほとんこまり入りしとかや又有時あるとき長庵來りて毎時いつもの通り種々いろ/\無心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其の範囲内では毎時いつもペテンを喰わされて居ました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
斯の伝説はかく若いものゝ知らないことであつた。それから自分の意見を述べて、いよ/\結末くゝりといふ段になると、毎時いつも住職は同じやうな説教の型に陥る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と、何かこう変化かわった事が起きて居はしないか。それとも毎時いつものように壁の方を
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
途中で逢うおりなどには、双方でお辞儀ぐらいはしたが、お島自身は彼について深く考えて見たこともなかった。そして青柳とおとらとの間に、その話の出るとき毎時いつも避けるようにしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
僕は青年時代の悲哀かなしみといふことを考へると、毎時いつも君の為に泣きたく成る。愛と名——あゝ、有為な青年を活すのも其だし、殺すのも其だ。実際、僕は君の心情を察して居る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すこしの酒がぐに顔へ発しる方の彼も、その日は毎時いつものように酔わなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
毎時いつも演説の前には内容なかみの話が出て、斯様かう言ふ積りだとか、彼様あゝ話す積りだとか、く飯をやり乍ら其を我輩に聞かせたものさ。ところが、君、今夜に限つては其様そんな話が出なかつたからねえ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
芸人が高座でする毎時いつもきまりきった色話だとか、仮白こわいろだとかが、それほど彼の耳を慰めるでも無かった。彼は好きな巻煙草をふかしながら、後の方の隠れた場所に座蒲団ざぶとんを敷いて、独りで黙って坐った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)