よわい)” の例文
旧字:
堕落々々と申して、ほとんよわいせぬばかりに申しておりますが、私達の恋はそんなに不真面目ふまじめなもので御座いましょうか。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あの往来において、一人の選挙権を有する土地所有者によって代表せられてる社会が、人のよわいせざる一人の女から侮辱され攻撃されてるのを見たのである。
古くその名称の由来を尋ねてみると、もとは賤民中の一階級の名であった。彼らは無論良民とはよわいされない。
当然風雅の間によわいせられなかった市井人しせいじんの以前の生活を、古い文芸の偶然なる記録の中から、探し尋ねてみようとした熱情は多とすべきであるが、なおその題目の都府に偏し
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうしてこの傾向は真の一字を偏重視へんちょうしするからして起った多少病的の現象だと云うてもよいだろうと思います。諸君は探偵と云うものを見て、よわいするに足る人間とは思わんでしょう。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みだりに人を軽蔑する者は、必ずまた人の軽蔑を免るべからず。互いに相不平をいだき、互いに相蔑視して、ついには変人奇物の嘲りを取り、世間によわいすべからざるに至るものなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
家中かちゅう一同は彼らを死ぬべきときに死なぬものとし、恩知らずとし、卑怯者ひきょうものとしてともによわいせぬであろう。それだけならば、彼らもあるいは忍んで命を光尚に捧げるときの来るのを待つかも知れない。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ほとんど最下等の労働者にさえよわいされない人非人にんぴにんとして、多勢たぜいの侮辱を受けている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
算筆の芸もとよりいやしむべきに非ざれども、当時封建士族の世界にこれを賤しむの風なれば、これに従事する者はおのずからその品行も賤しくして、士君子の仲間によわいせられざる者のごとし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これを家の厄介やっかいと称す。俗にいわゆる臁噛すねかじりなる者なり。すでに一家の厄介たり、誰れかこれを尊敬する者あらんや。いかなる才力あるも、臁噛はすなわち臁噛にして、ほとんど人によわいせられず。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
政治に関してはかつて儒臣のくちばしをいれしめず、はなはだしきはこれを長袖ちょうしゅうの身分と称して、神官、僧侶、医師の輩と同一視して、政庁に入れざるのみならず、他士族とよわいするを許さざるの風なりき。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)