“権(ちから)” の例文
旧字:權
否、塵芥は至粋を駐(とゞ)むるの権(ちから)なきなり、漁郎天人の至美を悟らずして、徒(いたづ)らに天衣の燦爛(さんらん)たるを吝(をし)む、こゝに於てか天人に五衰の悲痛あり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「其の名を信ぜし者には権(ちから)を賜いて之を神の子と為せり」とある其事である(約翰(ヨハネ)伝一章十二節)、単に神の子たるの名称を賜わる事ではない、実質的に神の子と為る事である
流転の力汝に迫らず、無常の権(ちから)汝を襲(おそ)はず。「自由」汝と共にあり、国家汝と与(とも)に樹(た)てり、何をか畏(おそ)れとせむ。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「記憶」渠唯だ記憶のみ、「過去」渠唯だ過去のみ、「未来」には権(ちから)あり、「希望」には命あり。
頑執妄排の弊 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
自然の力をして縦(ほしいまゝ)に吾人の脛脚(けいきやく)を控縛せしめよ、然れども吾人の頭部は大勇猛の権(ちから)を以て、現象以外の別(べつ)乾坤(けんこん)にまで挺立(ていりふ)せしめて、其処に大自在の風雅と逍遙せしむべし。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
彼は限ある物質的の権(ちから)をもて争ひ得る丈は、是等無形の仇敵と搏闘(はくとう)したりといふことを記憶せよ。彼は功名と利達と事業とに手を出すべき多くの機会ありたることを記憶せよ。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
造化(ネーチユア)は人間を支配す、然れども人間も亦た造化を支配す、人間の中に存する自由の精神は造化に黙従するを肯(がへん)ぜざるなり。造化の権(ちから)は大なり、然れども人間の自由も亦た大なり。
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
雨に対しては屋根を葺(ふ)き、雷に対しては避雷柱を造る、斯(か)くして人間は出来得る丈は物質的の権(ちから)を以て自然の力に当るべしと雖、かくするは限ある権をもて限なき力を撃つの業にして
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
婬靡を制する権(ちから)とては儒教の外になく、宗教の勢力は全く此点に及ぼすところなく、唯だ覚束(おぼつか)なき礼教の以て万法自然なる恋愛を制抑しつゝありしのみなる世に、斯(か)かる変体の仏出現ましまして