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樟腦
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しやうなう
疊迄熱くなつた
座敷の
眞中へ
胡坐を
掻いて、
下女の
買つて
來た
樟腦を、
小さな
紙片に
取り
分けては、
醫者で
呉れる
散藥の
樣な
形に
疊んだ。
そりや
無論道具よ。女に道具以上の
價値があツて
耐るものか。だがさ、早い話が、お前は大事な着物を
虫干にして
樟腦まで入れて
藏ツて置くだらう。
宗助は
小供の
時から、
此樟腦の
高い
香と、
汗の
出る
土用と、
砲烙灸と、
蒼空を
緩く
舞ふ
鳶とを
連想してゐた。