)” の例文
桓武平氏が阪東に根を張り枝を連ねて大勢力をつるに至つたことは、此の高望王が上総介や常陸大掾になられたことから起るのである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
伊丹城の四方に蜿蜒えんえんと長い壕を掘る仕事だった。また壕に沿って、塀や柵を二重三重にめぐらす工事だった。おびただしい人員が、炎日の下に、蟻のように働いた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我国の木屋もくをくは一きよにして焚き尽され、唯空地を遺すのみである。頃日このごろ所々に木札をてて故跡を標示することが行はれてゐるが、松崎慊堂かうだうの宅址の如きは未だ其数に入らない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
更に夏なれば虫屋、風鈴屋、簾屋、茣蓙屋、氷屋、甘酒やなど、路の両側に櫛比して店を拡げ、区劃を限って車止めの立札のてられる頃より、人出は夜と共にいや増しに増して
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
うたづる時、一隊の近衛騎兵このえきへい南頭みなみがしらに馬をはやめて、真一文字まいちもんじに行手を横断するに会ひければ、彼は鉄鞭てつべんてて、舞立つ砂煙すなけむりの中にさきがけの花をよそほへる健児の参差しんさとして推行おしゆ後影うしろかげをば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)