桜田さくらだ)” の例文
旧字:櫻田
「ありゃ面白い本ですね。私ゃ大好きだ。なんなら貸して上げましょうか。なにしろ江戸といった昔の日本橋にほんばし桜田さくらだがすっかり分るんだからね」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三日みつかは孫娘を断念し、新宿しんじゆくをひたづねんとす。桜田さくらだより半蔵門はんざうもんに出づるに、新宿もまた焼けたりと聞き、谷中やなか檀那寺だんなでら手頼たよらばやと思ふ。饑渇きかついよいよ甚だし。
桜田さくらだ」は、和名鈔の尾張国愛知郡作良さくら郷、現在熱田の東南方に桜がある。その桜という海浜に近い土地の田の事である。或は桜田という地名だという説もある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
老僕聞て大におどろき、すぐる三月三日、桜田さくらだ一条いちじょうかたりければ、一船ここに至りて皆はじめて愕然がくぜんたり。
明和九年二月二十九日のひるごろ目黒めぐろ行人坂ぎょうにんざか大円寺だいえんじから起こった火事はおりからの南西風に乗じてしば桜田さくらだから今のまるうちを焼いて神田かんだ下谷したや浅草あさくさと焼けつづけ、とうとう千住せんじゅまでも焼け抜けて
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
桜田さくらだたづきわたる年魚市潟あゆちがた潮干しほひにけらしたづきわたる 〔巻三・二七一〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)