根負こんま)” の例文
兎に角あの女には根負こんまけがする。たとひ逢ふと云はないまでも、おれと一度話さへすれば、きつと手に入れて見せるのだがな。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所長もとうとう根負こんまけして、それでは調べて見るもよかろう。漢方の薬でも効くのがあるからと、やっとのことでお許しが出たのであった。
地震なまず (新字新仮名) / 武者金吉(著)
そのうちに雨はますます降りしきるので、半七もさすがに根負こんまけがして、丁度通りかかったから駕籠をよび留めて、ひとまず神田の家へ帰った。
けれど和太郎さんのおかあさんは、じぶんの考えをいつまでもいいはるので、芝田さんもとうとう根負こんまけしてしまって
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あなたがよくあたし達を根負こんまけさしてしまうようなお話をして下さるのに、朝ほどいい時はたしかにないことよ。
仲々打開けませんでしたが、私が繰返し繰返し頼むものですから、兄も根負こんまけをしたと見えまして、とうとう一ヶ月来の胸の秘密を私に話してくれました。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そればかりでなく、この二、三日は武蔵も根負こんまけしたか、鍬を持たないのである。防いでも防いでも濁流になる耕地に立って、終日黙然と何か考えこんでいた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、とうとうお民の方が根負こんまけして、自分でお浜の家に出かけることになった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そこはありのほうが勇敢ゆうかんで、ともかばねうええて、目的もくてきかって前進ぜんしんをつづけるというふうで、この無抵抗むていこう抵抗ていこうには、こちらが、かえって根負こんまけをしてしまったよ。そのとき、かんじたんだ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そいでも口惜くやしさが一杯でしたよって、しばらくのあいだ男がペコペコお辞儀するのんじいッと黙ってにらみつめてましたけど、とうど根負こんまけしてしもて、たッた一と言「よろしいです」いうてしまいました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしどこまで行っても際限がないので、こっちもしまいに根負こんまけがして、途中から空しく引っ返して来た。こういう訳で、かれの居どころはたしかに突き留められなかった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
根負こんまけのかたちである。とうとう信長から云い出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝倉先生も、それにはとうとう根負こんまけして
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)