柳行李やなぎがうり)” の例文
「お安い御用だ、親分、——その押入の中にある柳行李やなぎがうりと風呂敷があつしの世帶。はゞかり乍ら錦の小袖も、絹のふんどしもあるわけぢやねえ」
丑松は二十四年目の天長節を飯山の学校で祝ふといふ為に、柳行李やなぎがうりの中から羽織袴を出して着て、去年の外套ぐわいたうに今年もまた身を包んだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あのかたは大きい柳行李やなぎがうり充満いつぱいあつたあなたのふみがらをあなたの先生のところへ持つて行つて焼いたと云ふこと、こんなことでした。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
火に迫られて下宿の家族と一しよに私が駒込西ヶ原へ避難する時、修一は私の重い柳行李やなぎがうりを肩にかついでくれたりした。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
醫者いしやすこ呼吸器こきふきをかされてゐるやうだからとつて、せつ轉地てんちすゝめた。安井やすゐこゝろならず押入おしいれなか柳行李やなぎがうり麻繩あさなはけた。御米およね手提鞄てさげかばんぢやうおろした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうかうする中に、頼んで置いた車も来る。荷物と言へば、本箱、机、柳行李やなぎがうり、それに蒲団の包があるだけで、道具は一切一台の車で間に合つた。丑松は洋燈ランプを手に持つて、主婦の声に送られて出た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)