)” の例文
……桃の節旬も近いというのに、春寒というのだろう、珍しく冷える夜で、火の番のの音が遠く冴えて聞えた。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
近所の小店こみせで時を打つの音が拍子を取って遠くきこえるのも寂しかった。行燈の暗いのに気がついて、綾衣は袂をくわえながら、片手で燈心をかかげた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
新しい芝居の広告を見たがり劇場で舞台裏のの音を喜ぶような感情、また漠然ばくぜんたる憎悪ぞうお怨恨えんこん、落胆、すべて失敗を運命の罪に帰せんとする虚栄、また不快、空想
とともに浅黄幕あさぎまくを切っておとし、本釣ほんづりの鐘をごーんときかせたいところであるが、生憎あいにくそんなものは用意がしてなくて、ただ聞えるは、草の根にすだく虫の音ばかり
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ならば、それがおおかた、今、を打って廻っていたとりの下刻でござりましょう」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついにの音が三つ響いた。祖父は鼻をかんで、ポケットから台本リヴレットを取出した。
千秋楽せんしゅうらくが入り、舞台楽屋万端取りかたづけの物音に目がめないというはずはないから、そうして長持も当然、納むべきものを納め、蓋をすべきは蓋をする運命とならなければならない瞬間に
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
味氣あぢきない世に葬禮さうれいたた
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
夜警のの音が遠くから聞えてくる。長屋の向うがわをまわり、老臣の家が並んでいるほうへとゆくらしい。……何に驚いてか、庭の虫の音がはたとやんだ。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やがて舞台の奥でがきこえる。それが木戸の外まで冴えてひびき渡ると、遊歩の人々は牧童の笛をきいた小羊の群れのように、皆ぞろぞろとつながって帰ってゆく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すっかり準備が整ったらしかった……。でもまだ始まらない! いったいどうしたんだろう。——彼は待遠しくてじりじりしていた。——ついに合図のの音が響いた。彼は胸がどきどきした。
そうするうちにが入ると、次の幕があきました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ひるだ。——を打て」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五人いる芸妓たちが「そうよそうよ」と声をあげ、幇間ほうかんの米八が二丁のを入れた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夜は火の廻りのの音が絶えずきこえて、霜に吠える家々の犬の声がけわしくなる。朝夕の寒気は市内よりもたしかに強いので、感冒にかかり易いわたしは大いに用心しなければならなかった。
「芝居ならば、ここでチョンとがはいる幕切れです」と、半七老人は云った。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夜は火の廻りのの音が絶えずきこえて、霜に吠える家々の犬の声がけわしくなる。朝夕の寒気は市内よりも確かに強いので、感冒にかかり易いわたしは大いに用心しなければならなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お絹は古い門柱へ倒れるようにりかかって、熱い息をふいていると、真っ暗な屋敷の奥では火の廻りのの音がきざむように遠く響いて、どこかの草の中からがちゃがちゃ虫の声もきこえた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
数人の従者はを撃って、夜もすがらその荷物を守っていた。