モト)” の例文
此中神瀬のが一番大きく、久喜のは柱モト岩とも言ふ。唐人神の鼻のは、要塞地帯に包まれて了うたから、もう見に行くことも出来ない。
雪の島:熊本利平氏に寄す (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「君ニツカエテソノモトヲ忘レズ。関羽はまことに天下の義士だ。いつか去ろう! いつかかえり去るであろう! ああ、ぜひもない」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爾に御子産みまさんとする時に、其夫に申し給わく凡て佗国アダシクニの人は、子産む時になればモトつ国の形になりてなも産むなる。故吾も今、本の身になりて産まんとす。吾をな見給いそと申し給いき。
比較神話学 (新字新仮名) / 高木敏雄(著)
語部が鎮魂の「ウタモト」を語る事が見え、又「事本」をるなど言ふ事も見えてゐる。うたやことわざ・神事の本縁なる叙事詩を物語つた様子が思はれる。
聖人ノハ、徳ヲ以テ、民ヲ化スヲモトトナス。刑ハ、以テソノ及バザル所ヲ、タスクルノミ……
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが同時に、小曲の説明として、長章が諷唱せられる事があるやうになつた。即順序は、正に逆である。かう言ふ場合に、之を呼んで「ウタモト」と称してゐた。
いくさとは——豆ヲルニ豆ノ豆ガラヲク——ようなもの。また——モトコレ根ハヒトツカラ生ジタモノ——。どんなたたかいにせよ、赤子せきしの殺し合いは、それだけでも最大な御悲嘆でなければならない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木津・難波には、モトと言ふ字のつく姓がある。樽屋が樽本、下駄屋が桐本、材木屋が木元など、皆、其商品を此が資本だ、と言ふ積りで拵へたのである。此は木津に多い。
三郷巷談 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
モトコレ同根ドウコンヨリシヤウズルモノヲ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わりに長く、平安期までも保存せられたものは、其国々の君が宮廷に奉仕した旧事を物語つて「国ぶりうた」のモトを証し、寿詞同様の効果をあげることを期する物語である。
モト是レ同根ヨリ生ズ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早く分離しても唱へ、或は、関係ある「モト」——本縁——の詞章を忘れたものが、多く行はれる様になつた為だ。かうして、游離した歌諺が、次第に殖えて行く一方だつた訣だ。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
あち見こち見して「此辺では、御座りませんでしたらうか」と老体の方に相談かける様な調子で言ひかけながら「ちよつと見えまっせんが、柱モト岩といふのが、どれ/\あなたのお持ちの地図の——と、こゝに載つてますね。此岩が、ちようどあのあたりになるのですが、一度見たきり長くなるので」
雪の島:熊本利平氏に寄す (新字旧仮名) / 折口信夫(著)