木槌きづち)” の例文
そのあとについて、八、九人の足軽あしがると十数名の人夫にんぷたちが、おのや、まさかりや、木槌きづちなどをかついで、なにかザワザワと話しながら歩いてゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
座長(木槌きづちを叩きて)「諸君、静粛せいしゅくに願いまする。本件の結論をテイラー博士より聴取したいと思います。テイラー博士」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
事務室の前につるした板木ばんぎ——寺院などでよく見るような——を鳴らすことになっていたが、次郎がその前に立って木槌きづちをふるおうとしていると
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
最初、木槌きづちたたくと、刃針ランセットが血管の上を滑ってしまう。そこでもう一度もっとしっかり手元を決めて叩くと、すずの手桶のなかにどくどくと血が流れ出す。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
だんまりで袋物の細工をして、時折トントンと小さい木槌きづちの音をたてるばかりだった。
ツチンボは藁細工わらざいくの藁を打つ木槌きづちのことで、これも幾分か形が似ていると言われぬことはないが、こちらはあるいはうつぼぐさの訛り、もしくは誤ってそう解したものとも見られる。
その間、ながく低くえるような木遣きやり歌であった。棟梁はいくらかあおざめていた。仕事の神聖さに圧されてこわばるような緊張をおぼえた。彼は木槌きづちをふりあげて棟木をうちおさめた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
何十石という大こが(醸造用の大桶)に足場をめぐらし、その日はお互いに助け合う同業の桶屋といっしょに、こがのまわりをぐるぐる回りながら、重吉の音頭に合せて大きな木槌きづちはどどん
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
椅子に腰かけている両足のうらを下から木槌きづちで急速に乱打するように感じた。
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
古くから山地の農民の間に実用されて来たように、おばあさんはその黄色な染料を山の小梨こなしに取ることから、木槌きづちで皮を砕き、日に乾し、せんじて糸を染めるまで、そういうことをよく知っていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
香煙が薫じて居る。木槌きづちで舞台を打つ合図の音が一つ。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
きぬた木槌きづちを下へおくと女房はぷいと起ってむしろの上へあがった。茶でもかしてくれるのかと思うと、そこに敷いてある乳のみ児の蒲団の中へ手枕で横になって、児に乳ぶさをふくませながら
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長官木槌きづちを叩く。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のみ木槌きづちをよこせ」と、いった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)