有卦うけ)” の例文
先づ当分は有卦うけに入つた気でゐるだらうけれども、福子の方がやがて庄造では喰ひ足らなくなつて、浮気をせずにはゐないであらう。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まるで、天からさずかり物のような今夜の使の話なのである。有卦うけに入るというのはこんなことだろうと独りで悦に入っていたのだ。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで二人のもぐりの騎士は、京都くんだりの不良少女からひどく慇懃なもてなしを受けて、有卦うけに入つてゐるのであつた。
探偵の巻 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ちっとあやかりてえものでごぜえます。へえい! そんな美的がころげ込んで来るたあ、殿様も有卦うけに入りましたね」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ですから、あいつらは有卦うけってるんでげしてね、祇園島原あたりで、無暗に持てるというから妙じゃげえせんか。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こいつアいいや。とど助さん、どうやら有卦うけに入りましたね。これも、ひとえに金比羅さまのご利益」
「俺、ことによると有卦うけにいったかな。熱海にいるうちに講釈で大看板になっちまうかもしれねえぞ」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
それからもう一人、周助さんといふあぶれも御座いますが、これはお孃さんを助けた人で、今のところは有卦うけに入つて居ります。何しろ、命の親は大したことですからね。
これを孔明こうめいの六曜占と名づけておる。また、有卦うけ無卦むけということがある。人の年を繰りて何年より有卦に入り、何年より無卦に入ると申す。有卦は吉にして無卦は凶である。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
いつも有卦うけにでも入った顔付で直ぐ馳せつけまして、いよ/\池上から結婚の話でも切り出されたのかと、ひとり飲み込み顔にわたくしに対座するのには随分嫌気がさしました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
亭主が有卦うけつて従来これまで隠してゐた真実ほんとう年齢としを打明けると、女房かない
「奥さん奥さん、今年はあなた有卦うけに入っていますよ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
このところ、がんりき、すっかり有卦うけに入って、天下の福の神に見込まれた、この分じゃ明日の合戦も百戦百勝疑いなしと、むやみに勇み立ちました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それからもう一人、周助さんというあぶれもございますが、これはお嬢さんを助けた人で、今のところは有卦うけに入っております。何しろ、命の親は大したことですからね。
庄造としてはぜんはしを取らぬ筈はなく、づ当分は有卦うけに入つた気でゐるだらうけれども、福子の方がやがて庄造では喰ひ足らなくなつて、浮気をせずにはゐないであらう。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「よかろう。どう転んだって怪我はねえ。いけなきゃア、また、お土砂よ。今度なら先口よりも一段といやちこだァ、驚くもんかい。……幸田節三、どうやら有卦うけに入ったな。じゃ、出かけるか」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
百姓たちは有卦うけに入ったような昂奮の渦をまもなくありのような列に変えてえんえんと山路へつづいた。その中には武者に付き添われた名和殿の奥方や小女房も交じって行ったようではある。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庄造としてはぜんはしを取らぬ筈はなく、ず当分は有卦うけに入った気でいるだろうけれども、福子の方がやがて庄造ではい足らなくなって、浮気をせずにはいないであろう。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
八五郎はすっかり有卦うけに入って、ニヤリニヤリと思い出し笑いをしているのです。
こうして衣裳榎へ多数の狐が集まるのは、それぞれの狐がみな官位を欲しがるからで、それと人間と一緒になって踊るのは、人間も狐も共に有卦うけに入ったのだという縁喜のよい解釈であります。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その用意のものものしいさわぎのなかで、有卦うけっていたのは竹童ちくどうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「千之助が死んで、飛んだ有卦うけに入つたのは、吉五郎とお前さんだ」
「千之助が死んで、とんだ有卦うけに入ったのは、吉五郎とお前さんだ」