)” の例文
広き庭にては池のあなた、籬の隅、あるは小祠の陰などのやゝ高き樹。春まだけぬに赤くも白くも咲き出したる、まことに心地好し。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
時、すでに春けて建安二年の五月、柳塘りゅうとうの緑は嫋々じょうじょうと垂れ、淯水の流れはぬるやかに、桃の花びらがいっぱい浮いていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし、それが都であったならば、秋がけて、変りやすい晩秋の空に、北山時雨しぐれが、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟さつまがたの沖遥かな鬼界きかいしまでは、まだ秋の初めででもあるように暖かだった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
けれど、わたしは、いつも忙しく暮しているので、年けてから、用のほかはゆっくり話あった日がすくないので、どんな風に、あの物語につき、紫女しじょについて考えているかを聞洩ききもらしてしまった。
が、性の本来は、陽物ようぶつだから時しも春けて、今ごろとなれば大いにうごく。龍起れば九天といい、人興って志気しきと時運を得れば、四海に縦横じゅうおうするという
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏侯覇は、命を奉じて、わずか二十騎ほどを連れ、繚乱りょうらんの秋くらけた曠野の白露はくろを蹴って探りに行った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)