明海あかるみ)” の例文
ふところに抱く珠の光りをに抜いて、二百里の道を遥々はるばると闇の袋より取り出した時、珠は現実の明海あかるみに幾分か往昔そのかみの輝きを失った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分じぶんくだしたおぼえがないにせよ、かんがやうによつては、自分じぶんせいあたへたもののせいうばふために、暗闇くらやみ明海あかるみ途中とちゆうけて、これを絞殺かうさつしたとおなことであつたからである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分が手をくだした覚がないにせよ、考えようによっては、自分と生を与えたものの生を奪うために、暗闇くらやみ明海あかるみの途中に待ち受けて、これを絞殺こうさつしたと同じ事であったからである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今にやろう、今にやろうと考えているうちに、とうとう八時過になった。仕方がないから顔を洗うついでをもって、冷たい縁を素足すあしで踏みながら、箱のふたを取って鳥籠を明海あかるみへ出した。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
背をえんに、顔を影なる居住いずまいは、考え事に明海あかるみむ、昔からのおきてである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は暗闇くらやみを通り抜けて、急に明海あかるみへ出た人のように眼をました。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)