旅装たびよそお)” の例文
旧字:旅裝
又八は、なるべくときを過ごそうと考えていつまでも虎の皮の前に立っていた。——すると、ふと自分の顔の前に、旅装たびよそおいの老夫婦が立って
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深編笠に裾縁すそべり野袴、柄袋つかぶくろをかけた蝋鞘の大小、スッキリとした旅装たびよそおい、足を入れたは東海道で、剣侠けんきょう旅へ出たのである。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
例によって旅装たびよそおいの七兵衛は、そこへ腰をかけたなりで、煙草を吹かしながら、話がこんなことに進んで行きました
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつぞや北条家の邸内へ来た時、柘榴ざくろをぶつけてやったおばばではないか。見たところ、その折とは違って、旅装たびよそおいも改まっているのだ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城太郎はもう雀の声といっしょにね起きている。武蔵も、今朝は早く奈良を立つつもりと、階下したの女主人へも告げてあるので、旅装たびよそおいにかかっていると
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一人は旅装たびよそおいの三十二、三、これは武家ていでござって、一人は弁慶格子べんけいごうしの着ものを着た町人でござりました」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっきから彼の背後うしろに立って怪訝いぶかしげに眺めていた婦人がある。娘と母であろう、二人とも軽い旅装たびよそおいはしているが身綺麗にして、男の供も連れていない様子。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄と、性善坊とが、旅装たびよそおいをして、ふいに訪ねてきたので、彼はこずえとともに、驚きの眼をみはって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれもが、旅装たびよそおいで、並木の木蔭に休んでいたところを、折ふし村の田楽たちが通りかかって
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森の小道でもけてきたか、とつぜんそこへ姿すがたをみせた人々は、民部みんぶをさきに、伊那丸いなまるをなかに、うしろに山県蔦之助やまがたつたのすけ加賀見忍剣かがみにんけんのふたりをしたがえた旅装たびよそおいの一こう四名。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅装たびよそおい物々しげな武者は、微醺びくんをおびて奥から出てきた男を、うさんくさいまなざしでじっと見、また尼の顔を見、これはしからぬといわぬばかりな顔つきを示し、出て行く友松のうしろ姿を
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楊志ようしは、よろこんだ。——すでに黄泥岡こうでいこうで仮死状態にまでちた毒も体から一掃されていた容子ようすである。次の日、夫婦が情けの旅装たびよそおいに、少々の路銀までもらって、青州へさして立っていった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千浪にとって、涙に暮れ、涙に明けた一月あまり——ちょうど作左衛門の三十五日に、如意輪寺の月巣庵から、跛行をひいた春日重蔵と、旅装たびよそおいの千浪とが、住職その他に別れを告げて出て行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そのさまを見て笑いながら近づいて来た旅装たびよそおいの若い女性が
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その旅装たびよそおいの、あかほこりのひどさを見送って
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)