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方様
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かたさま
それにつれなきは
方様の
其後何の
便もなく、手紙出そうにも
当所分らず、まさかに親子
笈づるかけて順礼にも出られねば
逢う事は夢に
計り
髭に続いて
差いのあるのは
服飾。
白木屋仕込みの
黒物ずくめには
仏蘭西皮の
靴の
配偶はありうち、これを召す
方様の鼻毛は延びて
蜻蛉をも
釣るべしという。
明けの別れに夢をのせ行く車の
淋しさよ、帽子まぶかに人目を
厭ふ
方様もあり、
手拭とつて
頬かふり、
彼女が別れに名残の
一撃、いたさ身にしみて思ひ出すほど嬉しく
悔しいにつけゆかしさ忍ばれ、
方様早う帰って下されと
独言口を
洩るれば、
利足も払わず帰れとはよく云えた事と
吠付れ。
方様に口惜しい程憎まれてこそ
誓文移り気ならぬ真実を命
打込んで御見せ
申たけれ。