新参しんざん)” の例文
旧字:新參
よもや、新参しんざん民蔵たみぞうが、その人の一民部みんぶであろうとは、ゆめにも知らない梅雪入道ばいせつにゅうどう、おもわず驚嘆きょうたんの声をもらしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
就中なかんずく厳しく守られていたのは新参しんざん故参こさんの序次で、故参は新参のために座より起つことなく、新参は必ず故参の前に進んで挨拶あいさつしなくてはならなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二三日すると帰り新参しんざんの丑之助君が、帰った時の服装なり神妙しんみょうに礼廻りをする。軒別に手拭か半紙。入営に餞別せんべつでも貰った家へは、隊名姓名を金文字で入れた盃や塗盆ぬりぼんを持参する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
四十と言えば分別ふんべつ盛りの好い年をしながら、ああして戸部近江之介他一同が、伊豆屋のお園の件をはじめ、つまらぬことで事ごとに眼に角を立てて新参しんざんの神尾喬之助をなぶり物にしているに際して
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いわずとしれた新参しんざんのお手伝いさんです。謎の少女です。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
新参しんざん小僧こぞうでございます。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
西町奉行の佐佐は、両奉行の中の新参しんざんで、大阪に来てから、まだ一年たっていない。役向きの事はすべて同役の稲垣いながきに相談して、城代じょうだいに伺って処置するのであった。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いえないものは、いえないではございませんか」まだ、登岳してから、半年もたない新参しんざんなので、性善坊は、できる限り、辞を低く答えてはいるけれど、根が、侍である。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
びた深林しんりん背景はいけいに、何と云う好調和こうちょうわであろう。彼等アイヌはほろび行く種族しゅぞく看做みなされて居る。然し此森林しんりんに於て、彼等はまさあるじである。眼鏡めがねやリボンの我等は畢竟ひっきょう新参しんざん侵入者しんにゅうしゃに過ぎぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
頻りと、焦躁ったり恐怖したりして、赤穂方の密偵に対して、密偵を以て報いたり、風の音や、犬の出入りにも神経を突ッついているのは、皆、この邸内にいる古参と新参しんざんの面々なのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お、新参しんざん民蔵たみぞうであるな、いつもながら気転きてんのきいたやつ……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)