まば)” の例文
志道軒しどうけんの孫弟子なにがしの辻講釈つじこうしゃく、冬の陣における真田父子さなだふしの働きぶりをたたきにたたいておりますが、戸板にかこまれた木戸銭の影もまばらで、このならびでは一番の不入り
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幅三十町、長さ五十町ほどの荒れ野原のっぱらの一部分だった。萩とかや野茨のいばらばかりのくさの中に、寿命じゅみょうを尽くして枯れ朽ちた大木を混ぜて、発育のいい大葉柏がまばらに散在していた。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ひらめくは聖体盒せいたいごうくもり、骨もまばらに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
私は人かげまばらな
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
郷里ふるさとあこがれ、春の陽光ひかりを待ちわびている孤独な人達が、そろそろ雪が消えて、まばらに地肌ぢはだが見えかけて来た時、雪間ゆきまがくれに福寿草の咲いているのを見たら、どんなによろこぶことでしょう。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)