故国ここく)” の例文
旧字:故國
戦争中せんそうちゅう特攻隊とっこうたいが、よく出発前しゅっぱつまえわかれのことばを放送ほうそうして故国ここくにのこしたことがありますが、地域ちいき関係かんけいからか、あにはこれにくわわらなかったのです。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家は長崎で、反物たんものや装身具や支那画などの長崎骨董ながさきこっとうを持って、関西から江戸の花客とくいを廻り、あらかた金にすると、はるかりのように、遥々な故国ここくへ帰ってゆくのである。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう無いかと思った命を拾うし、そして故国ここくの土をふむし、房枝の胸はよろこびにふるえた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横になるよりこころよねむりけるが、妾は一度ひとたび渡韓とかんせば、生きて再び故国ここくの土を踏むべきにあらず、彼ら同志にして、果して遊廓に遊ばんほどの余資よしあらば、これをば借りて、みちすがら郷里に立ち寄り
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
若くして異国を恐れ遠く来て今日この頃は故国ここくを恐る
なんでも臨終りんじゅうのさいまで、もう一故国ここくかえりたいといっていたことが、会社かいしゃともだちの便たよりでらされると
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どこのくにのおばあさんだろう。故国ここくは、とおいにちがいないが、いま、どんな気持きもちで、ここにきて、なにをしているのだろうか?」と、そんなことをおもいながら
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)