ささ)” の例文
八五薄酒うすきさけ一杯ひとつぎすすめ奉らんとて、八六高坏たかつき平坏ひらつきの清らなるに、海の物山の物りならべて、八七瓶子へいじ土器かわらけささげて、まろや酌まゐる。
「父母も花にもがもや草枕旅は行くともささごて行かむ」(巻二十・四三二五)も意嚮は似ているが、この方には類想のものが多い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「また我が子建御名方たけみなかたの神一〇あり。これをきては無し」と、かく白したまふほどに、その建御名方の神、千引の石一一手末たなすゑささげて來て
しんしんとして、木蓮もくれん幾朶いくだ雲華うんげ空裏くうりささげている。泬寥けつりょうたる春夜しゅんや真中まなかに、和尚ははたとたなごころつ。声は風中ふうちゅうに死して一羽の鳩も下りぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この心を知らずや、と情極じようきはまりて彼のもだなげくが手に取る如き隣には、貫一が内俯うつぷしかしら擦付すりつけて、巻莨まきたばこの消えしをささげたるままによこたはれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
山間の盆地が、その傷ましい、荒蕪な杯盤の上に、祈念の如くに空にささげてゐる一つの小さな街。夜ごとに音もなく崩れてゆく胸壁によつて、正方形にかぎられてゐる一つの小さな街。
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
はたかさで美々しく飾り、王みずから四種の兵隊を随えて智馬を迎え、赤銅の板を地に畳み上げて安置し、太子自ら千枝の金の蓋をささげその上を覆い、王の長女金と宝玉で飾った払子ほっすで蚊や蠅を追い去り
「さあ、覗いて御覧。」と、お杉は蝋燭を高くささげた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここに多遲摩毛理たぢまもり縵四縵矛四矛かげよかげほこよほこを分けて、大后に獻り、縵四縵矛四矛かげよかげほこよほこを、天皇の御陵の戸に獻り置きて、その木の實をささげて、叫びおらびて白さく