推移すいい)” の例文
過渡期かときの時代はあまり長くはなかった。糟谷かすや眼前がんぜん咫尺しせき光景こうけいにうつつをぬかしているまに、背後はいごの時代はようしゃなく推移すいいしておった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
大自然のすがたには、眼に見えて、これが変ったということもないが、人間の上にながれる十年の歳月には、驚かれるほどな推移すいいがあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしても將棋せうきがああまでもたゝかはなければならぬものになつて來た事は正しく時代の推移すいいしからしむる所であらう。
その人間の気持の推移すいいを見るのは、どんなえぐった小説を読むよりも、もっと恐ろしいものだよ。僕はその意味丈けでも、数十金の価は充分あると思うのだ
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この場の推移すいいを見ていて、どうにもじっとしていられなくなった司会者が、楽屋からとび出して来て、治明博士の前に進んだ。またもや割れるような満場の拍手だった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
糟谷かすやが自分の周囲しゅうい寂寥せきりょうに心づいたときはもはやおそかった。糟谷ははるかに時代の推移すいいからのこされておった。場長じょうちょう位置いちのぞむなどじつに思いもよらぬことと思われてきた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それから、どのくらいったのか、私には時間の推移すいいがサッパリ解りませんでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、大和の一角から天下の推移すいいに眼をうつすと、思いなかばに過ぐるものがあった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)