抜刀ばっとう)” の例文
旧字:拔刀
と一同を制して、其の中の重立おもだちたる一人いちにんを案内に立たせまして、流罪人取締の屋敷へまいりますると、二三の若者が抜刀ばっとうで立って居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旅人りょじんにだまされて林の中にり込まれて強姦ごうかんされた村の子守りの話、三人組の強盗が抜刀ばっとう上村かみむらの豪農の家にはいって、主人と細君とをしばり上げて金を奪って行った話
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
南無三なむさん呼子よびこをふいた部将が抜刀ばっとうをさげて、あっちこっちの岩穴いわあなをのぞきまわっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宛如さながら、狂人、乱心のものと覚えたが、いまの気高い姿にも、あわてゝあとへ退かうとしないで、ひよろりとしながら前へ出る時、垂々たらたらと血のしたたるばかり抜刀ばっとうさえが、みゃくを打つてぎらりとして
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だれかれの容赦なくブッタぎるぞと、だんなさま抜刀ばっとうあそばされた。佐平治がおしずめもうしあげるまで、けっして広書院のほうへ、でてはなりませぬ。命がおしくば、ちかづくでない! ……。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
もっとも、作事奉行さくじぶぎょう棟梁とうりょう工匠目付こうしょうめつけも、四方にかけあるいている使番つかいばんもすべてかみ鎧装がいそう陣羽織じんばおりしも小具足こぐそく、ことに人夫にんぷを使っているものなどは抜刀ばっとうをさげて指揮しきしているありさま。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが、御岳神文みたけしんもん三日みっかでなければ、とっくに、長安ながやす家来けらいあごをしゃくって抜刀ばっとうめいじたであろうし、気のみじかい忍剣にんけん禅杖ぜんじょうが、ブンと石見守の頬骨ほおぼねをおさきにくだいていたかもしれない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)